Viva L’Italia! An Introduction to Italian Craft Beer

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by Mark Meli

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日本にいるクラフトビール好きの皆さんなら、ここ1、2年でイタリアのクラフトビールを目にする機会が急に増えてきたと感じているのではないだろうか。樽生にお目にかかれる機会は滅多にないが、インターネットで検索すれば、ボトルビールであればいくつか見つかるし、一部のスーパーや酒屋などでも取り扱いを始めている。筆者の回りのビール好きたちは、すでにこれらのビールに注目し始めているが、イタリアビールの実態についてはまだまだ知らないようだ。自身も最近までそうだったので、この度、現地に赴き、実際の様子を見てきた。それ以来、イタリアビールの新しい動きを追い続け、出会ったビールは必ず飲んで味を確かめて、イタリアビールの歴史と今後の見通しについて理解を深める努力を続けている。

序論



イタリアで小規模醸造が始まったのは1990年代半ばのことで、日本で最初の地ビールブームが始まった時期よりもわずかに遅い。1996年にテオ・ムッソがル・バラデンを創立する以前にも小規模なブルワリーがいくつか創業していたが、それらはすべてこれまでに廃業しているため、バラデンが現存する最古のブルワリーである。90年代後半はブルワリーの数が増え続けたが、その速度は緩やかなものだった。ビリフィーチョ・イタリアーノ、ランブラーテ、ベバといったブルワリーがこの時期に創業しており、これらはすべて北イタリアに集中している。

イタリアビールの歴史はビールとワインの役割分担に関する頑なな考え方、官僚制度に対する戦いの歴史ともいえる。そのような状況の中で黎明期に創業したブルワリーのいくつかは、今世紀初めごろには、革新的で個性溢れるブルワリーとしての地位を確立していた。サワーエールを得意とするパニルなど、いくつかのブルワリーはイタリア国内で人気が出るずっと前から海外で有名になっていた。

2012年に筆者がイタリアを訪れた際、自分の国に400あまりの小規模ブルワリーが存在する事実を知って皆驚き、クラフトビールの人気が急速に高まってきているのは素晴らしいと口々に話していたが、その一方で、ブームに乗って登場したブルワリーの多くは品質に関する深刻な問題を抱えており、飲むに堪えないビールが多かった。現在で、イタリアには600を超えるブルワリーが存在しており、ここ数年の間に、日本のブルワリー数を超えるブルワリーが誕生したことになる。ビアバーの数の増え方も凄まじい。2012年初頭の時点でローマのクラフトビールバーはマチェ・シエテ・ヴェヌティ・ア・ファやオープンバラデンといった老舗を含め10軒前後であったが、現在ローマでクラフトビールを中心に扱うバー、レストラン、ショップなどの数は、優に100を超えているのみならず、ブルーパブも市内にいくつか登場してきている。その状況は東京とよく似ており、ローマでも毎週のように新しい店がオープンし、個性溢れるビールの魅力にはまる若者も増えている。イタリアと日本のクラフトビアシーンには似ているところが多いので、ここではその共通点を見てゆこう。

イタリアと日本の共通点



イタリアと日本のクラフトビールブームはほぼ同時期に始まり(日本1994年、イタリア1996年)、その後の成り行きも似通っている。ちょっと見ただけでも興味深い共通点がいくつも発見でき、同時に、大きな相違点も見えてくる。

元々ビールの国ではなかった



イタリアも日本も伝統的にビールの国ではない。イタリアは言わずと知れたワイン大国であり、日本はもちろん日本酒の国だ。どちらの国にもそれなりにビールの歴史があるとはいえ、イタリアと日本で大量に飲まれているのは大手がつくる薄いラガーである。ベルギー、ドイツ、イギリスと違って、イタリアにも日本にも国内で育まれたクラフトビールの長い歴史がないので伝統的な縛りがなく、ブルワーたちは良くも悪くも自由なスタイルでビールづくりを行っている。

影響された国



イタリアと日本のクラフトブルワーは、ベルギー、ドイツ、イギリス、アメリカのクラフトスタイルなど、様々な伝統的なスタイルの影響を受けている。

スタイル



ビールのみならず、食べ物、デザイン、国民性など、ありとあらゆる事柄について自国のスタイルを研究することにイタリア人も日本人も熱心である。もちろんクラフトビールについても。日本には酒米ビール、緑茶ビール、味噌ビール、考えうる日本の柑橘系の果物を使ったビールなどがある。イタリアのブルワーは栗、はちみつ、スペルト小麦、ブドウ(これは当然!)など地元の原料を使い、イタリアらしいユニークな味の探究に余念がない。また、イタリアのブルワーは、ワインの世界から多くの技術やアイデアを借用している。これは、日本の多くのブルワーが酒造の世界からヒントを得てビールづくりを行なっているのと同様である。

食べ物



この二つの国には豊かな食文化があり、それぞれの国民が大きな誇りを持っている。その食文化はビールの楽しみ方やビールづくりに影響を与え、フードペアリングの世界にも大きな可能性を生み出している。

官僚国家



感心しない共通点もある。イタリアと日本には頑迷で難解な官僚制度が存在し、官僚がつくる複雑な規則、不合理な税制、官僚の無気力・無関心などのために創造性が抑制され、新しいビジネススタイルが阻害されている。日本でもビール醸造免許を取得することは容易ではないが、イタリアではもっと難しい。日本の酒税法は不合理だといっても、イタリアの酒税法はさらに不合理なものである。日本政府はビール業界よりも日本酒業界を優遇しているといっても、イタリアにおけるワインメーカー優遇の方が甚だしい。事態が把握できただろう。どちらの国においても、クラフトビール業界は政府との関係において難しい問題を抱えているのである。

品質コントロール



残念なことに、負の共通点がもう一つある。どちらの国にも創造的で安定したビールづくりを行っているブルワリーがたくさんある一方で、創造性、技術的安定性、総合品質のいずれか、あるいはそのどれもが欠如しているビールが多いのも事実である。

イタリアと日本の相違点



類似点が多々ある一方で、大いに異なる点もいくつかある。

経験



イタリアのクラフトブルワーは、自家醸造からスタートし、醸造の醍醐味とできあがったビールの美味しさに魅了され、やがてブルワリーを立ち上げるに至るパターンがほとんどだ。日本においては、自家醸造は厳密に言えば未だに違法であり、多くのブルワーはブルワーとして雇われてからビールのつくり方を学び始める。

独立性



日本のブルワリーのほとんどは観光関係の会社、酒造メーカー、飲食業者などが親会社となってスタートしている。完全独立系のブルワリーが増え始めたのはごく最近のことだ。一方、イタリアでは、ほとんどのブルワリーがホームブルワーによって創業している。

情熱



日本では親会社主導のブルワリーがほとんどであるため、事業の目的は利益の追求であることが普通である。一方イタリアのブルワーは、ビールに対する情熱がそもそも半端ではない。

食事との相性



どちらの国にも素晴らしい食文化があり、それぞれのビールづくりに影響を与えているが、料理との相性を考えたビールづくりということに対するイタリアのブルワーの関心度は非常に高い。かつてはイタリア料理に合うのはワインしかないと一般には考えられていたため、イタリアのクラフトブルワーは日本以上にその固定観念を打破することに腐心してきた。そのため、イタリアのボトルビールは、テーブルに置いたときにワインボトルのような高級感を演出することを意識し、大型で装飾的なものが多い。一方、日本人は高級料亭でさえ「とりあえずビール!」と言うことを憚らない。そこで出されるのはクラフトビールではないが。

イタリアビールの独自性



ビール業界の中でも重要な意味を持つと思われる、イタリアビールのユニークな三つのスタイルを挙げてみよう。現在イタリアでは毎年大量のビールが製造されているが、その大部分は普通のペールエールやIPA、スタウト、ピルスナー、ウィートなどで、それらはクラフトビールを扱っているところならどこでも手に入る。しかしここで取り上げるのはそうしたビールとは違って、ブルワーたちが趣向を凝らしてつくりあげた大変素晴らしいビールである。

スロービール



日本でも地元に根差したビールづくりは行なわれているが、イタリアではさらにその傾向が顕著で、その土地の伝統的な食文化をビールづくりに反映させ、地元ならではの製品を製造している。こうした中でも特に秀逸なものは、イタリアを代表するビールとしてクラフトビール好きのイタリア人の間でも広く認知されている。このようなビールはスローフード協会の「Guide to Italian Beers 2015」の「ビッラ・スロー(スロービール)」というカテゴリーにおいて、「色や風味が卓越していることに加え、どのような風土で、どのような醸造所で、どのようなブルワーがつくっているのかが見えてくるような、想像力をかき立てられるビール」と記載されている。このようなカテゴリーは、ドイツ、イギリス、ベルギー、アメリカ、日本など、イタリア以外の国のビール関係の出版物には見当たらないだろう。同ガイドブックにはこのカテゴリーに該当するビールとして44種類がリストアップされていて、いくつかは日本にも輸入されている。

これはワインが生育する土壌を意味するフランス語「テロワール」をクラフトビールの世界でも意識しようというものである。イタリアのブルワーは地元の特産物を原料として使うことをビールづくりにおける中心テーマとする伝統を作ろうとしている。このような動きは日本でも見られるが、筆者が見たところ、これに関してはイタリア人の方が上のようだ。日本では日本文化をビールで表現したものとして山椒ビールや緑茶ビールが注目されているが、こうしたビールは日常的に楽しむタイプのビールとしては認識されていない。これらの中には真面目につくられた美味しいものも確かにあるが、ウケ狙いだろうと思わせるものも多い。一方イタリアのスロービールでは、そうしたことを感じさせないものがほとんどである。栗、雑穀、地元のフルーツなどを使ったイタリアのビールはイタリア国内で非常に高く評価されており、大変人気がある。

イタリアのスロービールの中で特筆すべきものをいくつか紹介したい。バラデンのノラ(生姜、ミルラ樹脂使用)、デル・ボルゴのゲンツィアーナ(リンドウの根を使ったエール)、ロルマイアのカラカデ(アフリカンハイビスカスに近いローゼルを使用)、アミアータのクロクス(サフラン使用)だ。

このようなビールが美味しく仕上がっている理由の一つには、ベースにベルギースタイルのビールや自然酵母ビールで使われている原料を使っていることが多いことが挙げられる。自然酵母にはこのような原料と調和するものが多いが、日本のビールでよく使われる英国産やアメリカ産のクリーンな酵母ではうまくいかないこともあるようだ。フルーツビールやスパイス入りビールを伝統的に最も得意としているのはベルギービールだから、理に適っている。イタリア産のこの種のビールにトライするときは先入観や偏見を捨てることが重要だ。その風味に驚かされることもあるし、ビールに対する考え方が変わるかもしれない。筆者の場合、イタリアのスロービール体験は、落胆ではなく興奮に満ちたものであった。

自然酵母ビールとサワービール



ベルギービールに近い別のスタイルとして、イタリアのブルワーの多くは自然発酵ビールや樽熟成ビールを手がけており、これらは細菌発酵に由来する酸味を伴っていたり、ブレタノマイセス菌株由来の納屋を思わせる匂いを伴うことがある。これらは概してアメリカの多くのサワーエールと比べて酸味が穏やかで、地元で採れたフルーツ、特にワインの伝統に鑑み、ブドウを使っていることがしばしばである。

パニル醸造所は最も早くからこうしたビールをつくり始めたブルワリーの一つで、2000年からバリックというシリーズをつくっている。このシリーズのビールはベルギーの伝統製法に則った樽熟成ビールで、フランダースレッドエールを彷彿とさせる。バリックシリーズは瞬く間にアメリカで大ヒットとなり、日本にも少量輸入されたが、現在では入手困難である。

サワービールを手がけるブルワリーで重要なところを挙げるとすれば、自然酵母ビールのみをつくっているローベルビア醸造所と、スロービールを手がける小さなブルワリーで、地場産品の使用と樽熟成で知られるモンテジョーコ醸造所の二つである。彼らがつくるビールは日本にも入ってきているので、後で詳細を述べたい。

その他、ベルギーのランビックを購入して自社のビールとブレンドしている醸造所がいくつかある。例を挙げると、デル・ボルゴのドゥケシクは同社のセゾンとカンティヨンのランビックをブレンドしたものであり、デュカートのビアセルモーニングは同社のニューモーニングセゾンにドゥリーフォンティネンの古いランビックをブレンドしたものである。ローマにあるレヴェレーションキャット醸造所もランビックをブレンド、バレルエイジング、ドライホッピングすることで知られており、それらすべてにベルギーのビールを使っている。

ベルギー系イタリア産ホッピーセッションビール



イタリアのクラフトビールづくりは当初から非常に強く、アメリカ産クラフトビールのホップ崇拝の影響も決して無視できない。その結果、ベルギースタイルでありながらホップが惜しみなく投入され、しかもバラエティに富んだビールが生み出されるようになった。ブロンドエールとセゾンでその傾向が顕著であり、それらの中にはユニークで個性に富んだものも含まれている。また、セッションビールの人気も高いことから、これらのビールはアルコール度数がやや低めにつくられる。ドライでホッピーなベルジャンブロンドをつくる最高のブルワーがイタリアには多く存在し、彼らがつくりだすビールは爽快な味わいを持ち、アルコール度数は決して高過ぎない。

このようなビールは、特に米国産ホップの人気の高まりが理由で、ベルギー本国においても近年人気が出てきている。デ・ラ・セーヌやデ・ランケのみならず、トラピスト系の醸造所までもが、ベルジャンは濃くて甘いという常識を覆してドライで軽めのビールをリリースし始めている。イタリアでつくられるこのようなビールには素晴らしいものがたくさんあるので飲み比べてみると面白い。

このスタイルを手がける醸造所の中で最も注目すべきはエクストラオムネスであろう。残念ながら日本にはまだ輸入されていないが。同社のブロンドはアルコール度数4.4%ながら、充分にドライホッピングが施され、アルコール度数の低さを全く感じさせない、力強い味わいに仕上がっている。ゼストはアルコール度数5.3%。こちらもドライホッピングを充分に施してあり、さらに強烈な味わいを備えている。同社のトリペルはアルコール度数がはるかに高いビールだが、やはりホッピーである。近年同社はシングルホップセゾンにも取り組んでいる。

ロルマイアとトレンタドゥエ・ヴィア・デイ・ビッライは、いずれもベルジャン酵母と大量のホップを使用して面白いビールをつくっており、これらは日本でも入手可能である。ロルマイアのLa 5は特に素晴らしい出来で、レモンに似たホップ香、爽やかさ、パンのようなモルト香を感じさせ、納屋のような匂いはセゾンのようでもあり、複雑な風味を持ちながらも驚くほど飲みやすい。トレンタドゥエ・ヴィア・デイ・ビッライのオッパーレも同じくライトでクリーンな味わいを持つビール。シトラスホップの特徴が前面に出ており、甘み、酸味、苦みを伴う味わいが完璧なバランスで調和している。その味わいはレモンとホップ入りのジェラートとでもいうべきもの。同社はセゾンも手がけており、3 + 2はアルコール度数3.2%のセゾンである。

イタリアのセゾンの中でいくつかの銘柄は日本でも入手可能だ。アルコール度数は低めでドライな味わいのものが多い。本家ベルギーやアメリカ、あるいは日本のセゾンと飲み比べてみるのも面白いだろう。イタリア製セゾンの中でも特に注目すべきは、トカルマットのタブラローサ、ビッラ・デル・ボルゴのドゥケッサ、デルカートのヌーヴァマッティナである。いずれもアルコール度数6%未満で、ホップと酵母の使い方が興味深くてユニークだ。

以上、筆者がイタリアビールで発見したいくつかの興味深いトレンドの中から三つのスタイルを紹介した。ほかにも、ホッピーなアメリカンスタイルのビールへのイタリア独自の面白いアプローチや、熟成した極上のバーレイワイン、イタリア国内でつくられる正統派のジャーマンスタイルビールなど、興味深いものがある。読者の皆さんもイタリアのこうした様々なトレンドを独自に探求してみてほしい。
 次の項目では、日本で入手可能なイタリアビールの醸造元の中から、興味深いブルワリーをいくつか簡単に紹介したい。



(次ページは、スペース上、紙媒体には掲載しなかったものです。マーク・メリによる、日本で入手可能なイタリアのビールに関する完全でより詳細な考察をお楽しみください)

日本で入手可能なイタリアビール



バラデンはテオ・ムッソが1996年に創業した、イタリアで最も歴史あるクラフトブルワリーだ。国内最大規模を誇り、影響力も大きい。イタリア料理に合わせることを意識した多彩なビールづくりを行っている。創業当初からベルギービールの影響を色濃く見せており、創業者のムッソは、変わった原材料の使用やユニークな醸造法を採用する革新的な人物としても知られる。日本で容易に入手できる4種類のビールはムッソがつくるビールの中でも比較的シンプルなものである。オープンとオープンリゼルヴァはベルジャン酵母の特徴を生かしたアメリカンスタイルのペールエール。イザックはイタリアの香辛料で風味付けしたベルギースタイルのウィート。スーパーはバラデン創業時を思い起こさせるベルジャンストロングエールで、ベルジャン酵母がもたらすフルーティーでスパイシーな風味が特徴だ。

バラデンのビールの中でも、最も美味しくオリジナリティに溢れたものは、日本では入手が困難だ。同社で最高のビールはムッソが手がける長期熟成バーレイワインで、特にXyauyuのシリーズは特筆すべきものである。開放型の金属製タンクで数年間熟成させ、充分に酸化させる。出来あがったバーレイワインはアルコール度数12%超で、炭酸はない。タフィー、チョコレート、シェリー酒あるいはポートワイン、様々なフルーツをミックスさせた味わいだ。ボディーは軽妙でライトかつシルキー、わずかな酸味を伴う。非常に希少で高価なものだが、大変独創的なバーレイワインなので、探してみる価値は充分にある。

ビリフィーチョ・イタリアーノはバラデンに次いで二番手に位置するクラフトブルワリーだ。創業者であるアゴスティーノ・アリオリはバラデンのムッソとはほとんど正反対のアプローチを見せる。ビールをシンプルに楽しむことを考えて専らジャーマンスタイルのビールをつくっており、料理とのペアリングにもさほどこだわらない。アリオリはドイツ以外で最も評判の高いジャーマンラガーをつくるブルワーとして有名になった。そういう意味では日本の富士桜高原麦酒、ベアレン、小樽ビールなどに近い。ティポピルスはホップ使いと飲みやすさの面で同社の最高傑作である。この上なく爽やかで軽やかな味わいと、苦みの利いたフィニッシュが特徴だ。アンバーショック(7%)とビボック (6.2%)はいずれもボックスタイルのビール。前者はアンバーカラーのデュンケルボックで、1カ月間のボトルコンディショニングを経ることで、トーストのような豊かなモルト香とクリーンでビターなフィニッシュが特徴となっている。ビボックの方は淡い琥珀色のヘラーボックで、華やかなシトラスホップ香とリッチでフルーティーなモルト香がある。同社のビールはすべて伝統的なラガースタイルであるが、やはりどこかイタリア的な香りも感じさせる。

ラ・ペトロニョーラも地元色とテロワールにこだわりを見せるブルワリーだ。特にスペルト小麦の使用が特徴的である。同社のビールの多くには地元の特産物が使われているが、100%ファッロ(4%)というビールは発酵性穀物であるスペルト小麦のみを原料としてつくられているというこだわりようである。他に栗ビール、アメリカンペールエール、ベルギースタイルのビールなども手がけているが、やはりスペルト小麦ビールが最も注目に値する。ネラアルファッロ(ブラックスペルト6.5%)はスペルト小麦を使ったコクのあるスタウトで、ビターチョコレート、ヘーゼルナッツ、ブラックベリーの味わいが特徴。最初は甘みを感じるが、ドライなフィニッシュが素晴らしい。アンブラータアルファッロ(アンバースペルト5.5%)はフルーティーかつスパイシーな風味を持ち、ピーチ、オレンジ、カモミールが合わさった複雑な香りが特徴である。そのオリジナルな味わいに驚くかもしれないが、これもフィニッシュはドライである。

ブリューフィストは2010年創業のブルワリーで、ホップを利かせたアメリカンエールと英国風エールで、日本でもすでによく知られている。かなり幅広いラインナップを誇るとともに、コラボレーションビールにも取り組んでいて、イタリアンサムライは箕面ビールとのコラボによる作品だ。アメリカウェストコーストスタイルでつくられるスペースマン(7%)は同社の代表的なIPAで、3種類のホップにより、柔らかく心地良い柑橘系の香りと、完熟したトロピカルフルーツのような香りを生み出している。グリーンパトロール(8.2%)はストロングなブラックIPAで、チョコレートとシトラスの味わいが見事な調和を見せながらも、コーヒーやカンゾウのような香りも楽しめる。ターミナルペールエール(3.7%)はレモンのような爽やかな香りを持ち、アルコール度数の低さを感じさせない濃厚な風味が特徴。ブリューフィストはホップが利いたビールで知られるが、まだ日本には輸入されていないものの、ラガーやベルジャンスタイルのビールにも取り組み始めている。全製産量のおよそ70%が樽で販売され、海外に輸出されたボトルよりも、樽(特にイタリア国内)の方がはるかにコンディションがよいことが多い。

モンテジョーコはイタリア北西部のリグリア州でリカルド・フランツォージが2005年に創業したブルワリーで、「地元密着型」を自認している。地元のフルーツを使って樽熟成させたものなど、いかにもスロービールらしいものを多く醸造している。同社のすべてのビールがリカルドの厳格なやり方に従ってつくられており、完成にはそれなりの時間を必要とする。コストをかけてつくられた同社のビールは、どれも複雑かつ洗練された味わいで飲みごたえがある。ブラン(8.5%)はベルギー寄りのバーレイワインで、チョコレート、プラム、レーズンが豊かに香り、エッジの効いた酸味とビターなフィニッシュが特徴である。ラムミア (4.8%)はワイン樽で熟成させたブロンドサワーエールで、ウッディで酸味の利いた、ワインのような香りが特徴。ラクァルタルナ(7%)はフランツォージの作品の中でおそらく最もよく知られたビールだが、樽熟成を施したブロンドエールで、地元産のピーチを使っている。仕込みから完成まで3年近くが費やされるこのビールは、どれもフルーティーで香りに満ち、オーク樽の香りを伴いながら、同時にドライで軽めな仕上がりだ。

ローベルビアは2009年にヴァルテル・ロベリエによって創業して以来、樽熟成ビールとサワービールのみを少量ずつ醸造している。伝統的なフランダースのレシピと技術に彼の地元ピエモントのワインづくりの文化をブレンドしたビールづくりを目指していると彼は言う。こうしてでき上がった彼のビールにはワイン用のブドウや地元で採れたプラムが使われているものが多い。筆者のお気に入りはサワーフルーツビールだ。デュヴァビアはフレイザという品種のブドウが使われていて、果実味があり、酸味が利いている。乳酸と酢酸のバランスが見事で、ブドウの香りが心地良い。バルベーラという品種のブドウを使って自然発酵させているビアベラ(8%)にはフルーティーで風変わりな香りと酸味があり、ワインのような香りもして素晴らしい。ビアブリューニャはダマシネというプラムを使用し、大変複雑な風味が特徴だ。

ビッラ・デル・ボルゴはローマ在住のアメリカ人からビール醸造を学んだレオナルド・デ・ヴィンツェンツォが2005年に創業したブルワリー。それ以来、デル・ボルゴは飛躍的な成長を遂げ、現在ではイタリアで最も大きなブルワリーの一つとして、イタリアのクラフトビール界を牽引している。伝統的なスタイルではなくシャンパーニュ方式に従い、テラコッタ(イタリアの赤土素焼き)の大鉢で発酵させたり、クールシップ(麦汁冷却槽)で自然発酵させたりと、やや実験的な方法で独自の味を追求している。同社のビールで最も有名なレアーレはアメリカンスタイルのペールエールで、イギリスとアメリカ両方の麦芽、ホップを使用している。ドゥケッサはスペルト小麦でマッシュをつくるセゾンビールで、レモンとハーブの香りが顕著である。ルブスはラズベリーを使った自然発酵ビールで、酸味が強い。同社はまた、ドッグフィッシュヘッドとのコラボレーションによるマイアントニアや、インペリアルスタウト、バーレイワインをつくっていることでも知られる。注目のブルワリーであることは間違いない。

トカルマットとは「ほんの少しの狂気」という意味で、2008年にブルーノ・カリリが創業したブルワリーである。カリリが得意とするのは自然発酵でも地元色の追求でもなく、ホップ使いだ。アメリカのクラフトビールに大いに刺激を受けている彼は、世界中から様々なホップを調達してきてドライかつホッピーなビールをつくることを主な狙いとしている。この方針の下、これまで彼は、ゾーナ・チェザリーニIPA、サーフィンホップインペリアルIPA、BスペースインベーダーブラックIPA、ストレイドッグノールールズビターといった傑作を生み出してきた。特にストレイドッグノールールズビターは伝統的な英国スタイルの傑作として世界中で高い評価を得ている。グルービングホップはドイツ産ホップとニュージーランド産ホップが使われ、ゴールデンエールのお手本として評価が高い。

トカルマットは、かつてはイタリアで最も早くからコラボレーションに取り組んでいるブルワリーの一つであり、現在はそのスタイルの幅を広げ続けている。これからどんな新しいビールが生まれてくるのか楽しみだ。

ビリフィーチョ・デル・デュカートを最後に紹介しよう。最後に紹介するからといって、その存在が小さいわけではない。食の都として世界的に有名なパルマ市の近郊に、2007年にジョヴァンニ・カンパリというブルワーが創業した同社は素晴らしいビールをいくつかつくっていて、評判が高いビールの多くは日本にも輸入されている。BIAというシリーズには伝統的なスタイルのものが幅広くラインナップされていて、独創的とはいえないにしろ、美味しいビールばかりである。ヴィアエミリアは、同社が最初に醸造したビールにして、同社を代表する存在となっている。このビールはドイツのケラービアという古いスタイルの製法でつくられ、長期低温熟成させた無ろ過のラガーである。ホップが非常に利いていて、ビスケットのような香りと酵母臭を伴うフレッシュなハーバルホップ香が最後まで続く。デュカート醸造所はイタリアの偉大なオペラ作曲家ヴェルディが生まれた町にあり、彼に敬意を表してつくられた同社のインペリアルスタウトには、ヴェルディの名が付けられている。このスタウトはすでに世界中で知られているが、実はこのビールは国際審査会でイタリアのビールとして初めて金賞を受賞したビールで、チョコレート風味を持つ傑作である。名前にルナ(「月」の意)という文字が入っているシリーズはすべてバーレイワインで、様々なタイプのオーク樽で熟成させたもの(ラルティマルナ)や、サワーフルーツビールとブレンドしたもの(ラルナロッサ)、スチール製の容器で熟成させたもの(ラプリマルナ)などがある。デュカートは様々なスタイルでたくさんのビールを手がけており、常に新しいものを生み出している。

現在イタリアのいくつかの新しいブルワリーが日本への輸出を始めている。ビッラ・フレアはベルジャンスタイルとアメリカンスタイルのビールを手がける醸造所で、フェデリコIIというとてもユニークなIPAをつくっている。クローチェ・ディ・マルト醸造所のビールは、スパイスを隠し味的にうまく使っているのが特徴だ。しかし、同社とアミアータのコラボレーションによるヘレスディアブロでは、隠し味的どころか、むしろ大胆に3種類ものチリペッパーを投入している。ビッラ・Gジュリアも新しい醸造所だが、最近東京で開催された国際食品・飲料展Foodex Japanでは、同醸造所のビールが人気を博し、ブースの前にはビールのおかわりをする人たちの行列ができていた。これからも日本にイタリアの新しい醸造所のビールがどんどん入ってくることを期待しよう。

最後に



現在日本で売られているイタリアのクラフトビールは概して値段が高めなので、やや敬遠されがちかもしれない。しかし今回見てきたように、イタリアのクラフトビールは品質が高いだけではなく、クラフトビールの世界に彼らならではのユニークな方法で貢献しているので、是非とも飲んでみて欲しい。今後人気が高まってきたら、新鮮なイタリアクラフトビールを味わうべく、現地へのパック旅行も企画されるかもしれない。そうすれば今回紹介してきた美味しいクラフトビールとともに、現地の素晴らしいイタリア料理を楽しむことができるだろう。行先はまずローマ。この街には有名なマッチェ、ビル&フュド、ブラッスリー4:20、オープンバラデンをはじめ、素敵なクラフトビアバーがたくさんある。現在ローマで飲まれているビールのなんと10%はクラフトビールである。ローマの次は、イタリア北部、トリノ市とミラノ市の間のエリアがよいだろう。ローマのように店がたくさんあるわけではないが、この辺りには今回紹介してきた素晴らしいブルワリーが多数存在している。現地のブルーパブで飲むフレッシュなイタリアンクラフトビールほど美味しいものはない。

ビール好きが訪れるべき国の一つとして、あるいはクラフトビール革新のリーダーとして、イタリアはその存在感を急速に増してきている。日本のクラフトビアシーンと共通点も多いので、イタリアで何が起きているのか、これから大いに注目しよう。

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